支えられたい願望

感情が動く。ぶれる。とある出来事がトリガーとなって、毎日そつなくこなしていたことさえ手につかなくなる。そういう瞬間がたまにある。


自分より若い人が活躍しているのを見ると怖くなる。
三十も半ばとなりもう慣れたと思ったのだが、フェンシングの太田雄貴さんの結婚報道を見て心がざわついた。若くて有能な人が突き抜けた活躍するのを見るが怖い。婚約相手の笹川友里アナは、彼を支えたいらしい。結婚を決めた理由を問われてそう答えていた。

支えたい。

そう言う女の子は多い。支えたい、そう思わせることが男がモテる秘訣なのかもしれない。

たとえイケメンであっても、たとえ金持ちであっても、支えたいと思わせる何がしか、を持ち合わせていなければモテないのではないか。

そんなこともないか。女の人にもいろんなタイプもいるし。

とはいえ、「支えたい」なんてけなげなこと言ってくれる優しい子に好かれたいなと思う。憧れる。そんな子に好かれたことあるかな。
と考えてみたら、あるか、あると言えばあるのか。あった気がする。

そのとき俺は26歳で、相手は10上だった。

銀座でホステスをしていたこともあって美人だったらしい。らしいと言うのは、俺から言わせたら、うーん、なんかピンと来てなかったから。ひどい話だが。
その人は、俺にいろいろ尽くしてくれた。

俺の健康のことを考え、無農薬とか有機野菜とかそんな素材で、ヘルシーで手の込んだ料理を作り、そして夜マッサージとかしてくれた。いい匂いのするオイルをつけて。
それで俺は、その人が好きでそうしてくれているものだと思っており、いっちょ前に人間の深層心理を見抜いているぞとでも思っていて、やらせてあげてるのだ、とかさえ考えていた。

アホである。

何か折、お会いする機会があれば、その旨全力で謝りたい。何かちょっと高い物でもプレゼントしたい。お金で解決したい。いや金があるわけじゃないんだけど、そうでもしないと申し訳なさすぎて。

ともかく話は戻るんだけど、俺は誰かに支えてもらえるほどのことしていないなと思う。
フェンシングの太田さんはすごい。逆境から結果を出した。まず選手として結果を出した。お金がないなか、自らで企業回りとかしたとか聞いた。その後、不人気なフェンシングを盛り上げるべく粉骨砕身働いた。後進を育てた。そして選手として引退した。あのとき彼は泣いていたように記憶している。それを見て、俺もうるっと来たような気がする。

俺は、何も頑張っていない。
まあ別に、太田さんと自分を比べて落ち込んでるわけじゃない。ふと、そういう感情が通り過ぎたのさ。無視することもできたけど、なんかざわついてそうできなかった。
笹川アナみたいな可愛い女性が支えてくれるなんていいなあ→支えられることしてるもんなー→俺してないわー→寝るわー。みたいな、そんな感じ。